住民税の非課税証明書の発行を待って、毎年の更新手続を行ってきた。
自立支援医療の制度とは、精神科への外来通院の医療費の自己負担分を国が補填してくれ、原則1割負担になる制度である。制度の意図としては、公衆衛生面の維持のための社会コストというところだろう。うつ病など一般的な精神疾患で、長期の服薬治療を指示されている人は多いと思うが、3割の医療費負担は重い。この制度は疾患を選ばず(※1)適用可能で、申請すれば利用できる制度なので、利用するだけお得なのである。ただし、収入によって自己負担金額が違うので、高収入の人はこの制度を実質利用できない場合がある(詳細は省略)。
しかし、この制度を医療機関がなかなか教えてくれない。そんな時には、市区町村の保健所に行くと、親切に教えてくれることが多い。私の場合も人は教えてくれなくて、ネットで自力で調べた覚えがある。この制度を積極的に教えてくれる病院は、かなり親切で良心的だといえよう(小平市の国立研究センター病院は教えてくれた数少ない例)。実は、保健所に足を運ぶと各種制度を結構親切に教えてくれるので、勇気を出していく価値があるかと思う。筆者も、当初住んでいた川崎市の保健所まで足を運んだ。
毎年6月前後の申請なのだが、それには訳があって、2006年に法律(障害者自立支援法)が変わって現行の制度になって、その制度の切り替えが7月末日だったので、その名残なのである。そのせいか、今日は保健所の窓口が混んでいて、かなり待たされた。
現行の制度は所得によって自己負担割合が大きく変わり、一定以上の高所得の人はこの制度を使えない(閾値がいくらかは興味がないので記載しない)。
一方、低所得の人は自己負担が原則1割である。その目安は住民税非課税のレベルで、その収入だけではまず生活できない。この場合、東京都の場合は自己負担割合がゼロになる(ただし、国保と社保で手続が異なる。生活保護の場合もこの制度を利用することになる)。
一定の収入があれば、多くは中間層で1割負担というのが普通だろう。
この制度のミソは、利用する医療機関と薬局(とデイケアなど)を指定するのだが、各1か所のみ指定可能ということだ。つまり、複数の医療機関をはしごして、両方で制度の適用を受けることはできない。片方は、保険の自己負担3割を払うことになる。
精神科の治療は専門領域が結構多岐にわたっていて、全ての精神科で全ての精神疾患を診られるというわけではないので、診られない場合は他の医療機関にかからなければならない。そんな場合は結構金銭負担が大きい。
この制度の申請には所定様式の医師の診断書が必要で、かつては毎年提出が必要だったが、現在は2年に1回で済むようになっている。毎年必要だった時代は、患者にとっては毎年数千円から1万円前後の診断書料金が必要だったし、医師にとっても膨大なペーパーワークに悩まされて踏んだり蹴ったりであったはずだ。
特筆すべきは、精神障害者手帳の申請と同じ様式の診断書なので、手帳と自立支援医療の同時申請が可能な点だ。障害者手帳の申請では、相応の審査がされているが、障害年金ほど厳しくはないと聞くので、精神疾患で年単位の通院をしている人は手帳の申請の価値があるかと思う(ただし、精神はJRなどの割引がきかない。残念)。
※1
カバーされる疾患が広いとはいっても(下記:結構広い)、疾患によっては自立支援医療制度が適用されない場合がある。診断書などの自費診療分は、当然ながら自立支援医療の対象外。また、精神障害者手帳の対象疾患とも違う。
(出典 厚生労働省WEBサイト – http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/seishin.html)
(1)病状性を含む器質性精神障害(F0)
(2)精神作用物質使用による精神及び行動の障害(F1)
(3)統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害(F2)
(4)気分障害(F3)
(5)てんかん(G40)
(6)神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害(F4)
(7)生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群(F5)
(8)成人の人格及び行動の障害(F6)
(9)精神遅滞(F7)
(10)心理的発達の障害(F8)
(11)小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F9)
※注意
本稿の扱いは、東京都での体験である。他の道府県では若干取り扱いが違う可能性があるので、各自最寄りの保健所まで確認されたい。