障害者の社会復帰としてのリワークプログラムの類型

就労支援
スポンサーリンク

本ブログのテーマの一つは、筆者自身も取り組んでいる、障害者(特に精神障害者)の社会復帰である。ブログのテーマとしては正直難しいのだが、実態を広く知っていただきたいという思いがあるので、頑張って書いている。

精神障害者の社会復帰、再就労に関する状況は、現在でも厳しいものであると考えている。筆者は数年前に、ハローワークの障害者枠求人で、職務経験を基にした職種をオープン(障害を開示すること)で再就職に挑んだが、面接に至ることなく不採用で書類が返却されてくることがほとんどだった。
それで、やむなくクローズ(障害を隠すこと)で一般求人に応募して再就職するも、数か月で体調を崩して退職を余儀なくされるというパターンを続けてきた。年齢も決して若いとは言えなくなってきて、クローズでの就職活動が難しくなってきた。

しかし、最近は状況が変わってきて、厚生労働省の統計では、精神障害者の新規就職者数が増加中とのこと、オープンにした障害者枠での就労に光が見えてきたのではないか、と思うわけだ。

オープン就労を目指すにあたって、障害者の様々な支援制度が利用できる。その代表格がリワークプログラム(復職・再就職支援)である。復職に当たって、企業によってはリワークプログラムの修了を条件にする場合があると聞く。

一言でリワークプログラムとはいっても、広い概念で、いくつかの制度に裏付けされて、それぞれ対象者も違う。大きく分けて、医療機関が運営する精神科デイケア(東京都立中部総合精神保健福祉センターのような公共機関を含む)と、福祉団体や株式会社が運営する就労移行支援が存在する。他にも、東京障害者職業センターのような公共機関によるリワークプログラムも存在するが、在職者対象なので、例外的な存在と考える。
それぞれ似たようなプログラムが提供されているが、違う制度がベースになっているので、対象者やサポート内容などが異なっている。

  • 精神科デイケア

運営主体:医療機関が中心
報酬体系:健康保険と自立支援医療(精神通院)
費用負担:利用者の自己負担は原則3割~負担なし
利用者収入:工賃等の収入は発生しない
対象者:主に会社在籍休職者の復職支援 ※失業者は対象外の場合が多い
プログラム:社会復帰のための活動・訓練が多い
再就職支援:含まれないことが多い

病院内の生活支援を目的にしたプログラムから、模擬会社的なプログラムを提供するものまでさまざまである。長期間の利用になり、なかなか卒業できないのが課題のようである。

  • 就労移行支援(福祉的就労)

運営主体:福祉法人や株式会社が中心
報酬体系:障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのよる報酬
費用負担:利用者の自己負担は1割~負担なし ※1割払ったとしても1月あたり20,000円前後
利用者収入:基本なしだが、中には、工賃による収入が発生する施設もあり
対象者:主に失業者の再就職支援 ※休職復職の場合も、場合により利用可能
プログラム:再就職のための模擬会社的な訓練、および再就職活動の支援
再就職支援:含まれる ※オープンが中心だが、クローズもあり

職のない障害者を障害者枠で一般就労させるプログラムであるが、2年間という利用期限があるので、重度の障害者にとってはハードルの高いプログラムかもしれない。脱落する場合もあるようである。

  • (参考)公共職業訓練 … 厳密には障害者のためのリワークプログラムではない

運営主体:ハローワークから委託された法人が中心
報酬体系:雇用保険
費用負担:完全無料
利用者収入:失業給付として、基本手当と訓練手当、交通費が支給される
対象者:雇用保険の受給者(失業者)
プログラム:再就職のための専門的な知識・技能の訓練・教育
再就職支援:職業訓練のプログラム自体には含まれない

病気が回復してきたら、まずはデイケアに参加して、コンスタントに出席できるようになったら、一般就労への手がかりとして、就労移行支援の制度を利用してリワークに参加して、就職活動につなげるというのが一つの流れではある。

しかし、会社に在籍して休職している場合は、再就職の必要がないため、いきなりリワークプログラムに参加することもありうると思う。

問題は、リワークプログラムの受け皿の収容人数が圧倒的に少ないために、リワークプログラムがもし有名になってしまった場合に、施設を利用してプログラムを受けたくても受けられないという、保育園のような状況になってしまうかもしれない。就労移行支援事業所の数が最近増加傾向にあるとはいえ、障害者手帳を持った障害者の数のほうが、施設の数よりもよほど多い。

大前提として、会社を余儀なく退職するケースが多いと思うが、障害者を好んで雇用する企業などないので、再就職のチャンスは厳しいものとなってしまう。できれば会社を退職せずに休職で対応するのを模索すべきだと考える。

(参考資料:精神経誌(2010)112巻3号 日本精神神経学会総会 pp238-245)
(アイキャッチ画像出典:無料写真素材ActivePhotoStyle ? http://activephotostyle.biz/)

タイトルとURLをコピーしました