障害者枠就労を実現するための考え方とステップ【精神障害者用】(後半)

就労支援
スポンサーリンク

本稿の前半では、障害のある人が障害者枠での就労を目指して行動を起こす上での筆者なりの考え方を紹介した。思い立った時から障害者手帳を取得し、場合によっては障害年金の請求をするところまでを述べてきた。

まだの方は、是非前半からお読みいただきたい。→ コチラ

(ちなみに、前半の内容は)
1.診断名確定・障害受容(当事者本人・親族)【必須】
2.自立支援医療受給者証の申請など経済的課題の検討【必要な場合】
3.就労支援機関の要否検討(障害福祉サービス利用の検討)→精神の場合は要検討
4.精神障害者福祉保健手帳の取得【オープン就労では必須】
5.障害基礎(・厚生)年金の請求・受給【オプション】

本稿の後半では、職業準備性が整ってきてから、実際に就職活動を行って、就労に至るところまでを述べていきたい。

(免責事項)

本稿の内容は、就労もしくは就職活動の成功を保証しているわけではありません。実際には個別の検討が必要なことをご了承のうえ、あくまでも一般論としてお読みください。

6.障害オープン(開示)かクローズド(非開示)かの検討

自分自身の障害を受け入れられたところで、自身の障害を開示して就職活動を行うか、障害を開示しないで一般の健常者として就職活動を行うかの検討を行うことになる。

障害オープンとは、自身の障害を開示して就職活動や就労を行うことである。オープンにする場合には、障害者手帳の取得が必須になる。
一方で、障害を開示しない場合を、一般的にクローズドと呼ぶ。クローズドの場合は、健常者と同じ条件・土俵上で就職活動および就労を行うことになる。

障害者枠での就労を希望する場合には、障害者手帳の取得が必須になり、障害をオープンにして進めることになる。オープンの場合は、何らかの障害がある=配慮すべき点があるということになる。自身の障害受容の結果得られる障害特性を把握したうえで、配慮点を見出していくことになる。

障害を開示しないでクローズドで就労するという選択ができるのは、ほぼほぼ精神障害者特有である。というのは、精神障害は外見から障害の有無を判断しづらく、状態によっては健常者と同じ条件で就労しうることもあるからである。他障害では、クローズドで働くという選択肢が例外はあったとしても、あまりないかと思われる。
精神・発達障害は、外見から判断されにくいことで配慮されにくく、生きにくい障害でもあるのだが。。。
クローズドで進めることを決断する場合は、オープン就労のような配慮を期待することはできなくて、健常者と同じ条件で就労することになるし(残業や出張などを受け入れなければならない)、就職活動の際にもブランク期間についてなどを厳しく問われることになるかと思う。

筆者の気付きとしては、特にADHDやASDなどの発達障害は一般の人々にはわかりにくく、それゆえ配慮や理解を期待するのは現状かなり困難である。一方で、発達障害の特性は割と特徴的でもあり、当事者や支援者からの目線からは、発達障害であることが見れば分かるという部分がある(だから、発達障害者同士は通じやすいのかもしれない)。
したがって、発達障害については、会社にオープンにしたほうがクローズドの状態よりはましで、良い点を活かして働くことが可能でありうる点である。特に、二次障害として精神障害が発症している場合は、オープン就労が無難ではないかと考える
発達障害をオープンにすることのデメリットは、個人的には現状理解が薄いがゆえに企業側にもノウハウが少なく、受け入れてうまく人材を活用することが困難であるがゆえに、採用されうるチャンスがより低くなる点であろうか。
実際、筆者がこれまでクローズドで働いてきて、障害特性ゆえの困難や生きづらさが多かったことから(特性上、すぐに会社を辞めさせられたことがあった)、このようなことを述べているわけである。

実際には、これまでの経緯で、精神疾患によって就労継続が困難であったことがある場合には、オープン就労を検討することになり、一方であまり悪い影響がなかったという場合には、将来の可能性を狭めないためにも障害を開示しないという線が妥当かと考える。

7.会社への配慮点の確定 【オープン就労】

この項目はオープン就労特有で、障害開示しないでクローズドで就活しようという場合には該当しないことを留意されたい。

オープン就労であれば、会社で働く上でどのような点を配慮してほしいかを明確にすることが必須である。そのためには、本稿の一番最初に述べた診断名の確定と障害受容が前提となってくる。障害受容から自らの特性や症状の把握につながり、そこから配慮点が見いだせるからである。

この作業にたどりつくまでは就活前の比較的厳しいステップなのであるが、当事者や支援者の方々には、是非あきらめることなくゴールに向かうことをお祈りしたい。

精神・発達障害者特有の典型的な配慮点としては、次のようなものが挙げられる(あくまでも代表的なものであり、本来は当事者ごとに違うので、個別に検討されるべきである)。

・平日の通院が必要な場合は、抜けるための配慮(就業時間の配慮)
・職場で起きうる問題点や課題を相談できる機会の確保
・感覚過敏の対策としての器具の使用、座席の配慮
・その他いろいろ

配慮点を個別に検討するためのリソースがネット上にも点在しているので、その資料を調べて自ら当てはまるかどうかを検討して配慮点を考えることをお勧めしたい。
代表的な公的リソースを若干であるが以下に紹介したい。

・国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害に関する資料

発達障害を持つ人がオープン就労を考えるときのバイブル的な資料かと思う。
当事者だけではなく、雇用主や支援者の目線からの資料も多いので、様々な立場の人々に参考になると考える。

http://www.rehab.go.jp/ddis/発達障害に関する資料

・内閣府 合理的配慮等具体例データ集(合理的配慮サーチ)

就労における雇用主に限らず、社会のいろいろな場面で、障害者に対して合理的配慮を提供する努力義務をする配慮が必要である。その事例が具体的に掲載されているので、それらの中から配慮点を見出すことも可能かと思う。

精神障害 合理的配慮等具体例データ集(合理的配慮サーチ):障害者制度改革担当室 - 内閣府
合理的配慮等具体例データ集(合理的配慮サーチ)「精神障害一覧」

この辺のサポートが、支援者にとっての腕の見せ所でもあると考えている。

7-1.職場体験実習の経験【支援機関所属の場合のみ】【推奨だが必須ではない】

配慮点を見出す上で大いに参考になりうるのが、職場体験実習である。筆者個人的には、実習の機会に恵まれなかったのだが、このような制度があって役に立つことを紹介したい。
障害者の多い職場を経験できることが多いので、障害者雇用のイメージをつけやすいと考える。

東京都においては、東京都の外郭団体である東京しごと財団が企業に実習実施の働きかけと助成を行っており、求職者の実習体験のためだけではなく、求人者である企業担当者にとっても障害者求人の募集チャネルを広くできることから、接触することをお勧めしたい。

財団のサイトには、これまで受け入れたことのある企業の一覧表がアップされているので、検索されたい。

企業体験実習に参加するためには、支援機関の紹介が必要であり、個人での登録は行えない。また、ハローワークでも受け付けていないので留意されたい。最近では、支援機関経由で、実習に参加するための面談会が実施されているようで、実習のチャンスが現実的である。

実習は企業によって数日から2週間程度で、その実績によっては採用に結び付く場合もあるらしい。。。
筆者はしくじったが、何らかの実習を経験しておくとよかった。

8.ハローワークへの求職登録(民間求人サイトも利用可だが。。。)

ここまできて、いよいよ求職活動に入る段階になる。
オープン就労の求職チャネルにもいろいろあり、障害者専用のウェブ求人サイト、人材紹介会社(エージェントともいう)も利用できるが、支援機関を利用している層の人々に最も頼りになるのが、ハローワークである。

各ハローワークには障害者専用の窓口があり、障害者手帳を持つ人たちが相談に訪れることができる(専門援助部門など、ハローワークによって部署の名称が異なる)。
障害者枠でのオープン就労求人の応募の際に、紹介状を発行してくれるのはこの窓口である。

利用するに先立って、当該窓口で求職登録を完了させる必要があるが、どこのハローワークでもよいわけではなく、現住所地を管轄するハローワークの専門援助窓口で登録する必要がある。管轄のハローワークについては、以下のサイトで調べられる。

全国ハローワークの所在案内|厚生労働省
全国ハローワークの所在案内について紹介しています。

登録するには障害者手帳の提示が必要で、求職票を窓口で記入して提出するのだが、これまでの職歴や希望職種、希望給与額などを記入する必要があるので、来所する前によく検討しておいたほうがよいだろう。くれぐれも自身の状態に見合った相場観ある希望を出されたい。

精神障害者の場合には、以下の様式の「主治医の意見書(様式4)」の提出を求められる。この意見書の内容で一般就労が可能かどうか、どのような職に応募できるかが決まる判断材料になる。
主治医とよく相談したうえで、就労にあたって無理のない内容を書いてもらうようにしたい。(筆者の場合は、勤務時間がフルタイム可能と書かれてしまい、勘違いして大苦戦したことがあるので、見当違いが許されない書類である。)

※ 書式は以下の様式通りであるが、記入する用紙自体は、登録の際に実際にハローワークの窓口でもらってほしい。

ハローワーク以外の求職手段としては、民間の障害者専用のウェブ求人サイトや障害者向けの人材紹介会社(エージェント)がある。
筆者の主観では、就労継続の実績がない精神障害者がそれらの媒体を利用するのは、現在のところはハードルが高いかと思う。
これらの媒体は身体障害者も利用するものであるため、就労時間などの制限がある精神障害者にとっては相対的にハンディキャップがあることが否めない。

現在就労を開始した筆者であっても、これから2,3年勤続できてからようやくエージェントなどの利用を検討できるかどうかの程度だと考えている。

9.応募書類の作成

実際に応募する前に、応募書類の準備を完了する必要がある。
一般的に提出を求められるのは、履歴書、職務経歴書と障害者手帳のコピーである。応募書類を郵送する場合は、それに加えて添え状(カバーレター)の作成が必要である。
英語に関係ある仕事の場合でも、障害者枠で英文レジュメを提出させるのは、現在のところはまれだと思うので、基本用意する必要はないはずである。

筆者が実践したのが、原点に返ったシンプルな書類作成。
ハローワークの情報が参考になるかと思う(URLは以下)。

https://www.hellowork.go.jp/member/career_doc01.html

その中で留意すべき点がいくつか。

履歴書のフォームは、市販されているものはさまざまであるが、上記ページに掲載されているJIS規格の履歴書用紙を使用するのをお勧めする。
職務経歴書については、これは一人ひとり経歴が異なるため、これが良いと断じることができない。

・すべての書類を西暦か元号で統一する(官公庁関連に応募する場合以外は、今時元号で記入する必要はないかと思う。元号使用の純粋民間企業は結構古い企業とみる)。

・履歴書を手書きするか否かはケースバイケース。業界にもよるが、手書きにあまりこだわる必要はないかと思う(手書き指定する会社は、ある意味特殊な会社であることが確かである)。
手書きで氏名を自署した場合は印鑑の押印不要、PCで作成した場合は念のため押印しておいてもいいかもしれない。

・履歴書に貼る写真が第一印象を決定づけるため、結構大事。できれば写真スタジオで撮影してもらうのが望ましい。

・履歴書最後の本人希望記入欄の使い方が大事。支援機関利用者はその名称を記入する。障害種別と時短勤務など必要な配慮を手短に記載しないと障害オープンの書類となりえない。

10.求人検索および応募先の検討

応募書類の準備が整ったら、いよいよ求人に応募できる。求人検索はハローワークで行うが、ここではハローワーク等で得た求人票の検討の仕方について触れたい。

その前に、求人検索について、ハローワークでは求人案件をネットで参照できるが、ネットでは求職登録者しか詳細を見られない案件もあるし、求人案件自体は存在するがそもそもネット公開していない案件があるのに留意されたい。
すべての案件をチェックするには、ハローワークまで足を運ぶのが基本である。

さて、話が戻るが、大事なのは、自分自身に見合ったポジションに応募しないと就労後に苦しむし、第一選考に通らないことである。
以下に、典型的ないくつかの実例をみながら、ポイントを述べたいかと思う(企業名は特定されないように網掛けしてあるので留意されたい)。

最初に、精神障害者が応募するような典型的な求人票全体である。(本稿では事務職を前提にお話を進めるが、他にも専門的職種や軽作業系の職種など様々な求人が存在することをお断りしておく。)

契約社員の一般的な事務職の案件。通勤手当は出るが、賞与はなし、社会保険はフル加入、完全週休二日制と一般的だが、勤務時間の調整が可能である点に要注意である。これが配慮事項でもある。

次の案件は、雇用形態が正社員のポジションである。

昇給、賞与があり、社会保険フル加入であるが、定年がある。一定の勤続期間があると、退職金も支給される。
ただし、筆者なりの見方であるが、一般的に、就業時間に関しては、最初からフルタイムで勤務できないと正社員として入ることが難しいかと思う。実際に、この求人案件には、就業時間に関する特記事項の記載がない。

次の案件は、応募のためのハードルが高い例である。

ネットワークエンジニアの求人であるため、ITエンジニアの経験が必要という時点で、応募者がかなり限られてくる(即戦力志向が強い案件)。残業時間も結構多く、就業時間の配慮もないため、精神障害者が応募するのは困難めな案件である。

次の案件は、就業時間の配慮がある案件である。

フルタイム前提の就業時間であるが、特記事項に週30時間勤務以上であれば時短勤務の配慮が可能という記載がある。
これが精神障害者にとってはミソで、長時間働いてはいけない特性からして、無理のない求人案件である。逆に言えば、時短勤務の配慮を打ち出している企業は、精神障害者にとって安心感のある会社ともいえるかと思う(アルバイト感覚になってしまうのが難点なのだが)。
頑張り次第で正社員登用の可能性ありとうたっていて、勇気づけられる(ただし、頑張りすぎは禁物である)。個人的には、この案件に応募してみたかった。

次の案件は、パートタイムの案件である。

このような求人のメリットは、扶養家族のいる人が家計を補うような働き方ができることである。一人暮らしで扶養者がいない人には経済的に厳しい案件である。

時給は最低賃金法上の最低賃金で、この時点で時給910円である。給料は安いが、社会保険がフルで付いてくる。就業時間も実働6時間かつ時間外勤務なしなので、精神障害者にとっては優しい案件である。

この案件の不安点は、最大3年までしか契約更新できない点である。個人的にはこの手の案件には近づかないことにしている。

最終的には本人がどのような仕事をしたいか、どのような働き方をしたいということが、上記にかかわらず最も大切な点である。
ただし、精神障害者の就業に当たっては、環境調整が最も大切なので、上記のような案件で環境を想像できるように紹介したわけである。

11.実際に就職活動を行う

これまでのプロセスを慎重に検討していれば、この段階で実際に動く場合の負担が減るだろうし、実際に受かりやすくなるかと思う。例えば、障害受容が薄いのに正社員の案件に応募するなどということを防止できるはずである。

ハローワークの場合は、応募したい求人案件が決まったら、相談窓口で紹介状の発行を受ける。以下が紹介状の様式であるが、将来変更になる可能性はある。
障害者雇用に関しては、採用する企業側にも助成金を受け取れるなどメリットがあるため、ハローワークを通して求人を行う会社もあるが、その際にハローワークから応募したということで紹介状が必要になる場合があるという話である。

障害者枠で採用選考に臨む場合、応募書類のところでも述べたが、自身の障害とその配慮点が何かを明確に説明できる必要がある。身体障害者の場合はそれが比較的容易なのであるが、精神・発達障害者の場合は結構大変なので、これまでの手順を慎重に、忠実に実行されたい。

ハローワークや求人サイトが面接会を主催して実施する場合があるので、それを活用すると効率的で、自身が相対的にどんな仕事が向いているのか判断しやすくなるので、参加することを検討されたい。

面接会については、本ブログの他の投稿(コチラコチラ)も参照していただきたい。

本稿の内容がまとまったものとなり、字数が多くなってしまったが、就労を目指す精神障害者の方々にはご健闘を祈るばかりである。(建設的なご意見があれば、コメントを寄せていただければ幸いである。)

タイトルとURLをコピーしました