東京都内路線バス 精神障害者への割引状況のまとめ【2018年】

精神疾患
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東京都内、およびその周辺を走る路線バスについては、身体・知的障害者に関しては割引制度がちゃんと完備されているが、精神障害者に対する割引は、未だに不十分である。

東京都が発行する精神障害者手帳を所持する人(東京都民)に関して、東京都の措置として路線バスの運賃が半額になっている。
しかし、都民以外の手帳所持者については、一部のバス会社を除いていまだ割引がなく、所定運賃を払わなければならない。

東京には、隣県や全国から仕事や所用、場合によったら施設の通所や通院などでやってくる精神障害者手帳を所持する人が中にはいるかと思う。それはやはり生活の一環だと思うが、彼らにとっては割引を受けられないのは酷である。

そんなわけで、本稿では、都内を走る路線バスで、都民以外でも割引を受けられる会社を、現状のネット情報を一覧にしてまとめてみたい。(人への確認だと全員に周知されていなくて、勘違いなどから誤案内を受ける可能性があるため、本稿では、ネット上の公式ページの記載内容を正確な情報と考えることにする。)

目次

東京都内路線バスの割引状況(精神障害者)

本稿執筆時点(2018年1月)で、精神障害者に対する路線バスの割引では、東京都内および神奈川県内では実施がかなり限定的で、東京都の住民のための限定的な割引以外は一部の会社を除いて割引が対象外になっている(隣接するところでは、川崎市と横浜市には住民に対する別の措置(各市内のみ有効の乗車証・パス発行)がある)。

詳細については、以下の一覧表を参照していただきたい。

その要約としては、バス会社の標準的対応として、東京都民(本人のみ)に対しては手帳呈示で運賃半額割引が保証されるが、都の助成対象外の東京都民以外に対しての割引は実施されていないというところである。
対象者の居住地に関係なく割引が実施されているのは、東京都内では埼玉県や千葉県に接する一部のバス会社である。
埼玉県ではすべてのバス会社が障がいの全種別で割引を実施しているものの、東京都と神奈川県内では精神障害者に対して割引がいまだ実施されていない状況である。
総務省の2016年末の資料によれば、神奈川県バス協会会員のバス会社に実施を働きかけているものの、全く理解が得られていない状況で、実際、横浜市営バス、川崎市営バスを含めて神奈川県内のバス会社を含め割引が未だに実施されていない状況なのは驚きである。

東京都内・周辺地域路線バスの割引一覧表(精神障害者)

次の表では、路線バスの各事業者(バス会社)、および都県の地域ごとに、東京都民(東京都発行の精神障害者手帳保持者)と都民以外(他道府県発行の手帳保持者)の割引適否をまとめた。
なお、各自治体内を走るコミュニティバスは、本稿の対象外とさせていただいた(ただし、足立区はるかぜと葛飾区内は手帳呈示で半額)。

本表の対象は地域を走る路線バスで、長距離を走る高速バスや空港バスは割引の対象にならない。

事業者名 区域 東京都民 都民以外
東京都交通局(都営バス) 東京都 無料 ※1 半額
西武バス ※2 東京都 半額 半額
西武バス ※2 埼玉県 半額 半額
東武バスグループ ※3 東京都 半額 半額
東武バスグループ ※3 埼玉県 半額 半額
東武バスグループ ※3 千葉県 半額 半額
東武バスグループ ※3 栃木県 半額 半額
国際興業 東京都 半額 ×
国際興業 ※4 埼玉県 半額 半額
朝日自動車【足立区内】 東京都 半額 半額
朝日自動車 埼玉県 半額 半額
京成バス 東京都 半額 半額
京成バス 千葉県 半額 半額
京成タウンバス 東京都 半額 半額
京浜急行バスグループ 東京都 半額 ×
京浜急行バスグループ 川崎市 × ※5
京浜急行バスグループ 横浜市 × ※6
京浜急行バスグループ 神奈川県 ※7 × ×
東急バス 東京都 半額 ×
東急バス 川崎市 × ※5
東急バス 横浜市 × ※6
小田急バス 東京都 半額 ×
小田急バス 川崎市 × ※5
小田急バス 横浜市 × ※6
神奈川中央交通 東京都 半額 ×
神奈川中央交通 川崎市 × ※5
神奈川中央交通 横浜市 × ※6
神奈川中央交通 神奈川県 ※7 × ×
京王バスグループ 東京都 半額 ×
関東バス 東京都 半額 ×
立川バス 東京都 半額 ×
西東京バス 東京都 半額 ×

※1 精神障害者都営交通乗車証を呈示した場合、本人のみ無料(介助者は手帳呈示で半額)
※2 通勤定期券3割引き、介助者1名半額
※3 通勤定期券3割引き、介助者1名半額
※4 埼玉県内及び都県跨ぎ路線のみ:通勤定期券3割引き、介助者1名半額
※5 川崎市ふれあいパス(川崎市民)所持者は本人のみ無料
※6 福祉特別乗車券(福祉パス)(横浜市民)所持者は本人のみ無料
※7 川崎市、横浜市以外の神奈川県内

本稿で上げた内容以上の個別の詳細や、乗車時の合理的配慮の要請については、各バス会社の最寄りの営業所まで問い合わせされたい。

まとめてみての所感

当事者の属性が同じにもかかわらず、居住地の違いのみで扱いに差が出るのは合理的なことといえないのは、誰の目にも明らかである。
また、個人的な見解だが、東京都や政令都市など地方自治体ベースの助成制度が全国制度統一の妨げになってしまっている典型的な一例である。

現状では、精神障害者に対する福祉割引制度について一貫した制度がなく、各事業者への協力要請にとどまっているため、必然的に全事業者で制度が一斉導入されずにまちまちな対応になってしまっている。当事者にとっても複雑な制度で混乱するに違いないので不利であるし、現場の職員にとっても適用可否を判定するのは困難だと思う。
各事業者の好意や配慮もいただきたいところではあるが、その前提としては、国によるトップダウンでの制度の策定も必要ではないかと思う。現在、日本は障害者権利条約にも批准しているし、障害者差別禁止法の理念にも反することなので、三障害の扱いを早急に同一制度として整備することが必要である。

行政あっせんや地方議会での意見書の可決などの努力が無にされないように、国(国土交通省、政府)や国会議員も本腰を上げて動いてほしい。
根本的には、このような投稿をわざわざ上げなくてもいいような社会であってほしいものである。

(参考資料)
総務省 関東管区行政評価局 「精神障がい者にもバス運賃の割引を」

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