秩父鉄道は、埼玉県北部の羽生駅(埼玉県羽生市)から熊谷駅(埼玉県熊谷市)や長瀞駅(埼玉県長瀞町)を経由して、三峰口駅(埼玉県秩父市)までを結ぶ71.7kmの路線です。
秩父地方で産出される、セメントの原料である石灰石を貨物として輸送するのが元々主力の鉄道でしたが、最近は旅客輸送が中心です。週末には、長瀞、秩父、三峰口といった観光地を網羅するSL列車「SLパレオエクスプレス」号が運行されています(冬季を除く)。
筆者も埼玉県民ということもあって、三峯神社(埼玉県秩父市)や秋の長瀞を訪れるのに、地元の秩父鉄道線を運賃割引でよく利用します。
同社の障害者割引の対象が身体・知的障害者のみではなく、精神障害者にも適用されているので、本稿で紹介したいと思います。
本稿ではあわせて、2022年3月から秩父鉄道でも導入された交通系ICカード(PASMOなど)を使用して運賃割引を受ける方法も説明したいと思います。

※(免責事項)以下の情報は本稿執筆時点の概要であるため、実際に利用される際には、詳細について当該事業者に各自確認をお願いします(特に介助者の付き添い要否に関して)。
※(お願い)本記事の内容を参照・引用して他のウェブサイトに掲載する場合、情報引用元として必ず、本ウェブサイトのURLを当該サイト上に明記してください。
目次
運賃の障害者割引制度の詳細
2022年3月から、秩父鉄道線内においても交通系ICカードを使用して運賃の支払いが行えるようになりました。基本的には、乗車時に改札機にタッチして、降車時に駅員さんに呈示して処理をしてもらう形になります。ただし、無人駅で乗降する場合は処理方法が違うため、十分注意してください。詳しくは本稿後半をお読みください。
【対象者】
精神・身体・知的障害者
(身体・知的第1種/精神1級)
障害者本人および介助者1名
(身体・知的第2種/精神2・3級)
障害者本人のみ
※ 居住地による制限は特にありません(手帳を所持していれば割引を受けられます)
【対象区間・設備】
秩父鉄道線内全区間
(精神障害者については、接続する西武鉄道、東武鉄道の割引は適用されません)
※ 急行券(現在購入不要)、SL指定券は割引対象外
※ 連絡する西武鉄道および東武鉄道には精神障害者に対する割引がないため、通しで乗車する場合は、割引が適用される秩父鉄道線とは別に乗車券を購入する必要があります。
※ また、秩父鉄道線に接続する西武線・東武線の障害者割引は、身体・知的障害者であっても限定的なので、留意ください。
【運賃割引率】
50%(半額:障害・等級による区別なし)
※ 基本は普通乗車券のみの割引。一定の条件を満たせば、定期乗車券・回数乗車券も半額。
※ 乗車券とは別にSL指定券を購入すれば、SL列車にも乗車できます(乗車券の運賃のみ半額)。

きっぷの買い方・電車の乗り方【交通系ICカード使用】
2022年3月より、PASMOなどの交通系ICカードで運賃の支払いと乗車ができるようになりました。
障害者手帳を所持し、運賃の割引を受ける手順は、駅によって以下の通りです。この手順を踏まないと運賃の割引処理がされず、知らぬ間に無割引の大人運賃が引かれてしまうので、ご注意ください。
【入場時(電車に乗る前)】
● 有人駅の場合
まず、駅員さんに行き先を申告して、ICカード乗車できるかを必ず確認します。
有人駅・無人駅にかかわらずICカードの処理が可能な駅の場合は、簡易改札機にあるICカードリーダー【入場】にICカードをタッチします。ICカードの処理ができるインターホンがない駅の場合、券売機で(割引運賃相当の)小児運賃のきっぷを購入します。

● 無人駅の場合(インターホンがある駅)
駅に遠隔サポートのインターホンがある場合は、インターホンにある「呼出」ボタンを押して、降車駅がICカードを処理できる駅かを確認します。
ICカードの処理が可能な駅であれば、簡易改札機にあるICカードリーダー【入場】にICカードをタッチします。ICカードの処理ができない駅の場合、券売機で小児のきっぷを購入します。

このインターホンの扱い方が説明された案内書面が掲示されていました。

● 無人駅の場合(インターホンがない駅)
インターホンがない駅から乗車する場合、駅に備え付けてある「乗降車駅証明書」を取って乗車します。降車する駅が有人駅と分かる場合はICカードで入場し、分からない場合は券売機で紙のきっぷ(小児運賃)を買った方がいいかもしれません。

【出場時(電車を降りた後)】
● 有人駅の場合
必ず駅員さんにICカードと障害者手帳を呈示して、割引運賃での処理を依頼します。
そのままICカードリーダー【出場】にカードをタッチしないよう注意してください。
● 無人駅の場合(インターホンがある駅)
遠隔サポートを行うインターホンで、割引運賃での処理を依頼します。その際、インターホンにあるトレイにICカードを置き、カメラに障害者手帳を映します。
そのままICカードリーダー【出場】にカードをタッチしないよう注意してください。
● 無人駅の場合(インターホンがない駅)
この場合にはICカードを使用できないので、以下の通りに乗車時に紙のきっぷを小児運賃で購入して乗車することになります。
ケース別の乗降方法は以上ですが、乗客にとってはICカードを使用するための負担が増えてしまったように思えます。何より、無人駅から乗車して無人駅で下車する場合、乗客にとって不安が大きいです。
きっぷの買い方・電車の乗り方【紙のきっぷ購入】
交通系ICカードを使用しない場合、もしくは無人駅で乗り降りする場合で遠隔サポートを受けられない場合、従前通りに紙のきっぷを乗車前に購入します。
有人駅の場合は駅員さんから直接購入することもできますが、基本的には券売機で(割引運賃相当の)小児運賃のきっぷを購入します。
無人駅から乗車し、無人駅で下車する場合、集札箱に割引運賃相当の現金を入れます。駅員さんの監視がないため、乗客のモラルに依存することになります。

ICカード導入以前は懐かしいきっぷで乗車【過去の記憶】
以前は、どの駅でも乗車前に駅窓口で手帳を提示して、割引で乗車券を購入できました。窓口で乗車券を購入した場合、青地の硬券が発行されます(小児専用券を代用)。窓口で該当する硬券がない場合、券売機で小児のきっぷを購入しました(ピンク地の軟券)。

SL指定券には割引がないので、一般のものと同じです。(現在は写真のSL整理券ではなく、A5判サイズの用紙に印字されたSL指定券です。)

その他の情報
【フリーきっぷについて】
一日乗車券であるフリーきっぷが、フリー区間によって2種類発売されています(「秩父路遊々きっぷ」および「秩父長瀞おでかけきっぷ」)。フリーきっぷは割引にならないので、損得を考えて使い分けましょう。線内を頻繁に乗り降りしない限りは、その都度障害者割引の乗車券を購入したほうが割安になるかと思います。
【情報出所(公式HP)】
運賃の障害者割引の提供有無は、運送約款の規定によらず、最終的には各事業者の判断となります。この割引制度は各事業者の好意と理解によって成り立っていることを理解された上で利用していただきたいです。
改訂履歴 Revision History
2022年01月26日 本文修正
2022年3月13日 本文加筆
2022年3月17日 第2稿(本文大幅修正)