オンライン当事者会「かきぶき庵」運営の苦悩~立ち上げから解散まで~★

就労支援
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筆者金海(当時のハンドルネーム「かきぶき」)が、主に一般就労ではたらく精神疾患・発達障がい当事者が集うオンライン当事者会「かきぶき庵」を2018年9月に立ち上げました(2020年1月に解散し、現存しません)。

筆者が知り得るところ、このような当事者会は日本では他にはなく、「かきぶき庵」が現在でも唯一無二の存在かと思うのですが、これまで順調満帆だったわけではありませんでした。

本稿では、オンラインコミュニティーの運営の難しさと、管理人かきぶきが抱えた苦悩を吐き出していこうと思います。

目次

何とか無料で場を広く提供したいと思ったが

はたらく当事者が情報交換したり、悩みを相談したりしたいという人のニーズを拾うために、広くメンバーを募集して規模を大きくしたい一方、はたらく上での悩み=会社での業務情報の漏洩、秘密を守るセキュリティーの確保も課題なだけに、そのバランスをどのように確保しようかとずっと悩んできました。

その解決策として、オンラインビデオ会議ソリューションのZOOMのミーティングIDを公開するのではなく、Slackというコミュニケーションツールと連携してZOOMを利用するという形態をとっていました。それは、誰でも好きな時に入れればいいのではなく、メンバー制にする必要があり、承認作業の負担がありました。

このようなコミュニティーは他に存在しないし、自分がコミュニティーを運営した経験もなく、専門家が監修しているわけではないので、当初は無料でコミュニティーの運営を始めました。他にも、無料で自由に参加できる大きなコミュニティーが当時はあって、そちらにニーズとユーザーが流れていたことも無料で運営した理由でした。

タダ乗りする連中がいる

無料で運営すると、頭を抱えるのが、おいしいところだけをもっていってしまうタダ乗りする人たちの対応でした。

かきぶき庵でも、Twitterでメンバーを募集してSlackで情報交換していたのですが、運営開始時点ではポリシーが確立しておらず、誰にでもSlackの閲覧を許してしまったために、Slackの投稿内容が外部にダダ洩れ状態で、メンバーリストを他のコミュニティーの営業に利用された形跡もありました。

また、当初は物珍しさで多くの人が体験しに来てくれたのですが、コミュニティーにはどうしても合う合わないがあって、なかなかメンバーが定着しないのが悩みどころでした。人が離れて行ってしまうというのは主催者にとっては大きな苦悩で、個人事業主がお店を経営するような困難さがあることを知りました。

Polcaで「支援」を募った

それでも、オンラインコミュニティーを運営していくにあたって、システムにかかる費用が発生するので、無料運営では自分が持ち出すばかりでした。

筆者が生活の自立に困るほどの経済状況だったこともあって、それだけの支出をする余裕もなく、運営費用を支援に頼ることにしました。支援には、「Polca」(ポルカ)というシステムを利用して、匿名ベースで決済できました(Polcaのサービスは現在終了しています)。

コミュニティーを理解してくれる人たちは確実に存在していて、その先1年間運営していくのに十分な支援をいただくことができました。

運営2年目に入ったところで

状況が大きく変化しました。立ち上げからちょうど1年経った2019年9月に筆者が他の会社に転職して、コミュニティーの運営に心砕できる状況ではなくなってしまったのです。

一方で、「かきぶき庵」がちょうど2年目に入る2019年9月に、NPO法人コンボの「こころの元気プラス」のコラムにかきぶき庵の活動が紹介されて、一時的に入会の問い合わせが増えました。

それまでしばらく新規メンバーの公募を控えていたのですが、当該コラムの掲載にあわせて公募を開始しようとしていました。

かきぶき庵は、少人数でじっくりと話をする場でした。いきなりメンバーを増やして場の雰囲気を変化させないために、入会希望者の入室を管理をする必要があったのですが、それが負担になってパンクしてしまいました。

メンバー管理の負荷と、ZOOM有料プランをとっていた経済的な負荷のダブルパンチ。

それに輪をかけて悩まされたのが、かきぶき庵に登録だけしてZOOMには全く参加しない「幽霊部員」の存在。都合や体調が悪くて参加できないのは想定の範囲内であるが、半年以上参加しないメンバーが大半になってしまった現状がありました。運営者としては、ただ単に在籍していたいというのは迷惑千万なお話なのです。

ついにブチ切れてしまった!

2019年10月、転職2か月目で新しい仕事を覚えるのに必死で、会社でも早急に成果を出すようにプレッシャーをかけられていたタイミングでした。

新しいメンバーが数名初参加のウェイティングに入っていたのですが、その調整をもうやっていられなくなって、次の定例会を実施できる気力が失われてしまったのです。

当時はほとんど毎日雨が降っていて、台風や大雨の災害が集中したタイミングでした。それで自分のメンタルをやられていたのが悪い材料でもあって、もうやっていられない状況に陥っていました。

さあ、これからどうしよう

ついに、かきぶき庵を休会にしようと決意してメンバーに告知したのでしたが、ありがたいことに強い結束ができていて、続けてほしいという慰留を受けました。(これがメンタルには尚更きつかったのです。)

メンタルがきつくて、季節性のうつ症状が出ている時期で、この苦しみを会社の健保が契約しているEAPのカウンセリング電話に投げかけてみました。

悩みを一通り話したところで言われたのが、1年間よく頑張ったけど、コミュニティーの運営は難しいもので、ネットの世界では尚更だということでした。

会の運営の役割を他のメンバーが持ち回りで担える可能性も探ったのですが、オンライン当事者会の宿命が、ホストが一人で回さないといけないというところで、とても孤独感の強いところなのです。

運営ルールはしっかり整備してあるものの、役割分担はどうにもならない。さあ、これからどうしようか。。。

結局有料化で報酬を受け取るしかないか

メンバーのコミュニティーへのコミットメントが薄くなるという特性上、運営者が何らかの報酬を得て、仕事としてコミュニティーを運営をせざるを得ないかと思いました。

会場を確保して実施するリアルの当事者会でも必ず参加費を支払っているのに、オンラインの当事者会が無料というのも、利用者にだけおいしいお話です。

同時に、利用規約の遵守の誓約をしない非現役メンバーの整理を行いました。

一過性のイベントならば無料で対応できることもありますが、長く運営を続けていくには、良くも悪くもビジネスベースにやらないと続かないものだと学びを得ました。

コミットメントの対価として少額でもお金を支払ってもらって、運営者としての心のバランスを確保するしかないのです。

最終的にはかきぶき庵の解散を決めた

有料での展開も考えましたが、それは会を定期的に運営する義務が生じるということでもあります。かえってプレッシャーになるのではないかとの思いが強くて、最終的には会の解散を決意して、運営を終了しました。

一人で運営するのは困難で、やはりコアメンバー最低2,3人でチームを作り、役割を分担して運営しないと負担がかかりすぎて、会の運営を続けられなくなります。

コロナでの外出自粛でオンライン当事者会

2020年春に深刻化したコロナウイルス拡散抑止のために、外出を自粛し、自宅にいなければならないということがありました。

メンタルヘルスのためにも人と話すことが推奨されていますが、友人と話すだけではなく、職場や家庭で話せないことを当事者仲間で話すこともいい手段です。

そのために、オンライン当事者会が見直されてもよいかと思います。金海はこのような経験をしたため、二度と当事者会の運営者にはなりたくありませんが、チームで運営できれば、お話ししたいというニーズはあるかと思います。

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