精神障害者保健福祉手帳取得のメリット・課題

精神疾患

筆者が発症当時うつ病に罹患して通院を始めて2年経った時に「精神障害者保健福祉手帳」を取得してから、本稿の執筆時点でちょうど16年が経過しました(「精神障害者保健福祉手帳」については、以下「手帳」もしくは「障害者手帳」と記載します)。手帳には2年間の有効期限があり、継続して所持したい場合は更新手続が必要ですが、筆者は2020年7月に8回目の更新を完了しました。

筆者が手帳を取得したきっかけは、税金の減免でした。手帳を取得する利点は多くありますが、主な利点としては以下があります。

● 税金が安くなる(税額・控除とも)
● 公共施設や交通機関を安く(無料で)利用できる
● 障害者雇用で障がいを開示して就労できる
● 単身でも公営住宅に応募できる
● 等級によっては生活保護の扶助に加算がある

精神疾患や発達障害の当事者がこの手帳以外に利用できる制度としては、外来通院の医療費の自己負担が軽減できる「自立支援医療(精神通院)」制度がありますが、手帳を取得しないと利用できないわけではありません(手帳と自立支援医療とセットで取得すると便利ですが)。

本稿では、手帳の取得までの流れと、東京都が発行している平成30年度の「障害者の生活実態」から興味深い点をかいつまみ、手帳を所持して良かった点や課題点を考察したいかと思います。

精神障害者保健福祉手帳の取得方法・必要書類

精神疾患や発達障害で、初診日から概ね6か月以上継続して精神科や心療内科に通院し、継続して治療が必要な場合に手帳を申請し、所持することができます。

取得するための申請窓口は居住する自治体によって違い、市区町村の障がい福祉課や保健所である場合が多いです。申請するためには、以下の書類を提出します。

● 障害者手帳申請書
都道府県や政令市、中核市によって様式が異なりますが、申請者本人の個人情報とマイナンバーを記載します。
● 手帳用診断書
用紙を申請窓口でもらってから、主治医に記入してもらい、提出します。現在の病状や日常生活能力の程度など多くの情報が記載されるため、初診から継続して主治医(精神保健指定医)を受診する必要があります。
● 顔写真
昔はプライバシー面から顔写真がありませんでしたが、現在は手帳に顔写真を貼ってあり、公的身分証明書の役目を果たします。2年間使用する手帳なので、写真スタジオで撮影することをお勧めします。

申請してから大体2-3か月後に手帳が出来上がってきて、受け取ることができます。手帳と自立支援医療の手続(特に更新時期)を一緒にすることができるので、自治体の申請窓口に相談してみてください。

自立支援医療だけを受けたい場合も主治医の診断書が必要になるため、手帳をセットで取得する場合が多いかと思います(診断書の様式は異なりますが)。そのほうが診断書代金の節約にもなります。

精神障害者保健福祉手帳所持者数の状況

全国レベルでの手帳所持者数は、65歳未満の59.4万人および65歳以上・年齢不詳の24.7万人で、合計すると84.1万人です(2016年)。

(出所)令和元年障害者白書

また、東京都での手帳所持者数は11.8万人です(2019年)。また、2018年度の自立支援医療利用者数が22.6万人で、その内手帳の所持者数が約半数ということが言えます。手帳を取得する心理的な障壁が存在しているものと考えられます。

(出所)東京の保健福祉2020

障害者手帳を取得して良かった点

本稿でご紹介する内容の資料出所が東京都が行った調査なので、ここで取り上げる点も東京独特なものとなることをお含みおきいただきたいと思います。

精神障害者に関し、手帳を取得して良かった点として挙がったのが以下の点です。

「都営交通乗車証」が取得できたこと
● 都内路線バスの割引があること
● 都営公園・美術館が無料で利用できる点

その他には、就労しやすくなったり、税金が安くなることを挙げる当事者が多いようです。特に、発達障害の当事者にとっては、手帳を取って就労することに利点を感じる人が多いようです。

東京都独自の施策として特徴的なのが、手帳所持者に提供される都営交通に無料乗車できる「都営交通乗車証」や、自立支援医療制度における独自助成(住民税非課税者に対する都単制度)で、財源が潤沢な東京都ならではの利点だと思います。

(出所)H30 障害者の生活実態 p223

障害者手帳を取得する上での課題

手帳には有効期限があり、現在は2年間ですが、有効期間をもっと長くできないかという議論があるようです。手帳の更新手続を行う対象者が多く、自治体の事務負担が重いことや、症状が固定しているにもかかわらず、たびたび更新をしないといけない負担が重いというのが根拠で、4年更新にできないかなどと言われているようです。

障害者手帳を取得して障害者で就労する場合、多くは非正規雇用であるのが現状です。下図を見ると明白ですが、精神障害者は非正規職員・従業員の割合がとびぬけて高く、正規の職員・従業員の割合が驚くほど低いです。身体障害者は、正規、非正規、自営業ともに均衡で、健常者に近い割合なので、いかに「精神」=「非正規」という図式が支配的だと考えざるを得ません。

(出所)H30 障害者の生活実態 p320

以下の表でも、精神障害者手帳所持者の非正規就労の割合が高いことを物語っています。

(出所)H30 障害者の生活実態 p188

就職した時期に注目すると、精神障害者の場合、障害者になった後、つまり発症後に就職している手帳所持者が多いことが言えます。障がいを持った後に離職し、社会復帰する段階では正規就労が難しく、非正規就労に甘んじざるを得ない現状が見えます。

また、障がいを持つ前に就職し、障がいを持った後も就労継続している場合、正規就労している割合が比較的高いことが言えます。障がいを発症しても、勤務している会社は極力辞めないほうがいいということが言えます。

(出所)H30 障害者の生活実態 p191

精神障害を持っていることによってあきらめざるを得ないこととしては、就職することが挙がっています。そして、人付き合いが次点になっています。この傾向は、特に発達障がいの場合に顕著だといえます。教育を受けても人間関係の構築に課題があり、就職や人付き合い、恋愛・結婚に困難があることが見えてきます。

意外なのが旅行や遠距離の外出ですが、これはたまたま筆者が旅行会社勤務の経験があり、スキルが高いために問題が見えづらいだけだと思います。旅行の予約や多くの人とのコミュニケーション、症状のコントロールなどの課題が多いのは確かです。

(出所)H30 障害者の生活実態 p210

参考資料 References

– 令和元年 障害者白書(内閣府)
– 東京の保健福祉2020(東京都)
– 障害者の生活実態 平成30年度 東京都福祉保健基礎調査報告書(東京都)

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