精神・発達障害者が知っておきたい障害者雇用の助成制度

就労支援
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精神障害者保健福祉手帳等の所持者が障がいを開示して障害者雇用で働く場合、雇用する事業主向けには国や自治体による多くの助成金の制度があります。

2021(令和3)年3月から障害者の法定雇用率が、民間企業で2.3%に0.1ポイント上昇します(本稿執筆時点では「その見込み」です)。その法定雇用率を満たすためのハードルが雇用主にとっては結構高いということもあってか、障害者雇用の取り組みを推進するための国や自治体の後押しの制度が結構充実しています。

例えば、代表的な助成金として「特定求職者雇用開発助成金(特開金)」があります。本稿だけで説明することが到底できない複雑な助成制度ですが、身近なものには精神障害者や発達障害者を雇用し、給与を支給した場合に、大企業で100万円(1年6か月間)、中小企業で240万円(3年間)の賃金の助成があります。

本稿では、精神障害者が障害者雇用で就労する場合に雇い主である事業者が利用できる代表的な助成金や実習制度について、当事者として知っておきたい制度をかいつまんで取り上げたいと思います。また、非正規の有期契約社員で雇用されることが多い精神障害者が正社員に登用される場合の雇用主への助成金も含めて説明します。

目次

特定求職者雇用開発助成金(特開金)

一般の人より就職が難しい障害者や高齢者、ひとり親の人等の就労を後押ししようと設けられた雇用主向けの助成金の制度です。特開金には多くのコースがありますが、本稿では精神障がいと発達障がいに関係ある部分を取り上げます。

● 特定就職困難者コース

精神障害者保健福祉手帳を含む障害者手帳所持者や高齢者、ひとり親の求職者が対象になるコースです。様々な複雑な支給要件がありますが、要件を満たすと大企業と中小企業の別に一定期間支給した賃金の一部を助成してもらえます。

精神障害者の場合、法定雇用率の算定対象になることはよく知られていますが、この制度では重度障害者として多くの助成金を企業がもらうことができます。週30時間以上働く労働者1人当たり、大企業で最大100万円(1年6か月までの助成)、中小企業で最大240万円(3年までの助成)です。精神障害者の場合は、週当たりの労働時間に関係なく重度障害者になります。

資金面から障害者雇用をバックアップしようとするものですね。こんな制度もあるんだと思っていただければいいと思います。

● 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

上記の障害者手帳を所持しない対象の求職者を雇用した場合にも、この助成を受けられるように設けられたコースだと思われます。大企業、中小企業および短時間労働者であるかどうかの別によって助成金額が変わりますが、中小企業の場合は最大2年間で120万円の助成を受けられます。

助成金を活用して積極的に雇用するホワイトな企業に就職したいですね。逆に、この助成金の受給だけを目的にしたブラック企業の見極めが必要だと思います。助成期間が切れた途端に雇い止めされたら当事者が不幸ですし、助成制度の意味がありませんからね。
詳細が知りたい場合は、ハローワークに問い合わせしてみてください。

東京しごと財団職場体験実習助成金

東京都ならではの独自の助成金制度です。東京都内の就労移行支援事業所等を利用している当事者は、企業への実習に参加できる場合がありますが、その場合の事業主側への制度です。他の道府県の方はご参考まで。

東京都内に本社または事業所がある、法定雇用率未達成の中小企業が、実習生を受け入れた場合に6万円の助成金を事業主が受けられます。

この実習を受け入れたことがある企業のリストをネットから参照することができ、就労移行支援事業所でも見ることができるかと思います。就職活動の前に企業での実習経験を積みたいという場合に良い制度です(実習から雇用に至るケースもままあるようです)。

職場体験実習受入企業のリストは、以下のURLを参照してください。
https://www.shigotozaidan.or.jp/shkn/company/workplace_experience-based_training/documents/0815taisyoukigyou.pdf
※ リストに載っている企業が募集中とは限りません。

制度の詳細は、東京しごと財団まで。

有期契約労働者(契約社員)の正規・無期雇用転換の助成金

特に精神障害者では、障がいを開示した上で障害者雇用で就労する場合に、雇用形態が契約社員になることが大半で、正規雇用で(正社員として)長く働き続けることが大きな課題です。本稿の筆者も執筆時点で有期契約社員の身分で、正社員への転換と雇い止めについては常に気になります。

有期契約労働者の正規雇用転換に関する問題は、障がいの有無には関係のないことですが、本稿では精神障害者に特有のこととしてお話しします。

有期雇用で働く場合、働き始めてから5年間が経った時点で労働者側から無期雇用に転換したいという希望を会社に出せば、次の契約からは無期雇用になります(正社員になれるとは限らないことには要注意です)

精神障害者の場合、まずは長期にわたって安定就労をすることが最初の課題で、それをクリアできてからのネクストステップになりますが、長く働き続けるために知っておいてよいかと思います。

● キャリアアップ助成金(正社員化コース)

従前、平成25年までは「均等待遇・正社員化推進奨励金」として支給されていたこともある助成金です。このコースでは、はっきりと「正社員」とうたっています。

有期雇用・(非正規)無期雇用の労働者が正規雇用・(非正規)無期雇用に転換された場合にこの助成金の対象となりますが、就労継続支援A型の利用者が転換した場合は対象外です。就業規則に転換制度が明記されていなければならないので、就業規則を読んで対象かどうか確認できるかと思います。

諸条件を満たすと、有期→正規、無期→正規、有期→無期の転換区分に応じた助成金を雇用主が受け取れます。例えば、有期雇用従業員を正規雇用した場合、中小企業では1人当たり57万円、大企業では42.75万円となります。ひとり親が対象者の場合には助成金の加算があります。

照会先は、ハローワークです。

「正社員化」という割には、(非正規)無期雇用も対象になるのがザルなところです。いずれにせよ、安定して就労できてきた場合の次の段階の目標だと思って、頑張ってください。

障害者「雇用」に関する筆者の所感

障害者雇用については、障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)に定義されているように、企業等に雇用されることが前提となっています。今後はテレワークや在宅勤務で、時間にとらわれない働き方になり、雇用ではない業務委託での働き方も考えられます。

筆者としては、就労に制限や配慮が必要な障害者の働き方は、業務委託よりは雇用のほうがなじむと考えています。業務委託では「労働者」ではなくなるために、雇用されていれば保護されていたものの多くが失われる恐れがあるからです。就労上の制限や配慮は、業務委託では受けることができません。

障がいの有無に関係なく、今後企業の雇用の負担を回避したがる動きが出てくると考えられるので、注視したほうが良いと思います。

参考資料 References

– 事業主と雇用支援者のための障害者雇用促進ハンドブック(東京都)
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/shiryo/2019handbook.pdf

– 契約社員ハンドブック2018(東京都)
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/shiryo/keiyakushain2018_all.pdf

– 有期契約労働者の雇用管理の改善に関するガイドライン(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/other25/dl/01.pdf
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/other25/dl/02.pdf

– キャリアアップ助成金のご案内(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000616643.pdf

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