最近の障害者雇用・就労移行支援の動向【2021年新年挨拶】

行政支援
スポンサーリンク

筆者が、障害者のための就労支援サービスである就労移行支援を2017年に利用終了してから、4年が経ちました。また、引き続き利用していた就労定着支援の利用も2020年で終了しました。

それらのサービスの利用終了から、本稿執筆までの期間、1回障がいオープンでの転職を挟んでいますが、障がいをオープンにしての障害者雇用にて一般就労を続けています。この間の障害者雇用制度や就労移行支援・就労定着支援の動向を、本稿にて考察したいと思います。

目次

障害者雇用制度について

社会連帯の理念に基づき、企業や官公庁、団体では雇用人数の一定割合の人数の障害者を雇用しなければならないことになっています。2021年3月から、民間の一般企業においては、雇用者数の2.3%に相当する人数の障害者を雇用しなければなりません(中小企業に対する緩和措置も終わるはずです)。

この割合を法定雇用率といいますが、ここ最近上昇が続いているため、障害者雇用(障害者枠)での就労が追い風になっています。2018年に精神障害者のカウントが義務化されたこともあり、精神障害者の就労者数も増加していて、数年前では精神障害者が雇用されなかった大手企業においても、最近では雇用実績が出てきています。筆者の実感でも、従前は精神障害者には手が届かなかった業種や会社でも、最近はチャレンジできるようになってきたかと思います。

この制度については、法定雇用率を達成できていない場合、不足1人当たり50,000円の障害者雇用納付金を支払い、法定雇用率を満たした場合、超過1人当たり27,000円の調整金(報奨金)を受け取れる仕組みが運用されています。

企業にとっては、法定雇用率を満たせないと納付金を支払う必要があり、企業の社会的責任を果たすという観点からも、障害者雇用が理解・推進されている状況です。

障害者の社会復帰の段階

障がいを持った当事者が社会復帰し、就労継続を果たすために利用できる社会資源とその段階はどうなっているでしょうか。本稿では、障害者雇用にて一般就労する場合を想定します。

(1) 障害者就業・生活支援センター

通称「中ぽつ」と呼ばれる機関で、各市区町村にあります。生活面の相談と就業面の相談ができるため、これから社会復帰を考えたいという方が最初に相談できる機関です。精神障害者の方はまず、居住地域の保健所や福祉部署に利用の相談をすると良いかと思います。

これから社会復帰を考える段階では、生活に関する相談が可能ですし、就労移行支援や就労定着支援(作業所)利用の相談もできるかと思います。

利用が完了し、一般就労する段階に至った場合、企業との調整にもあたってくれます。就労上の悩みを相談することができます。

各種機関と連携して支援してくれる機関なので、積極的に利用するといいかと思います。

(2) 就労移行支援

障がいを持った当事者が、就労準備の訓練や就労スキルの獲得、就職活動の支援を包括的に受けられる障害福祉サービスです。利用者である障がい当事者は、サービスを提供する事業者と利用契約を結び、世帯収入に応じた利用料金を支払ってサービスを受けます。原則2年間で就労を目指すことになりますが、必要と判断された場合は最大3年間までの利用が可能です。

利用を終了し、一般就労で働き始めてから6か月間、企業での定着支援を受けることができます。職場環境や自分の健康状態など問題が生じやすい期間で、長く働き続けるための調整をしてもらうための期間です。

(3) 就労定着支援

就労移行支援の定着支援の期間が完了して、なお定着支援が必要な場合、最大3年間継続して職場定着のためのサービスを受けることができます。精神障害者の場合、中長期にわたって支援が必要なケースが多く、この制度を活用できるかと思います。就労移行支援と同様、障害福祉サービスとして提供されるため、利用者が事業所に利用料金を支払う必要があります。就労継続は当事者だけではなく、企業にとってもメリットがあるにもかかわらず、利用料金の負担が労働者である当事者の負担になってしまうという大きな問題が現状ではあります。

就労移行支援の利用終了から最大3年6か月でサービスの利用が終了することになり、その後は上記(1)の障害者就業・生活支援センターによるサポートに戻ることになります。

就労移行支援・就労定着支援の最近の動向

筆者が就労移行支援の利用を始めた2015年は、就労移行支援事業所数が増えている状況で、就労移行支援が広く認知されてきた段階でした。その後2017年までは利用者数や事業所数が増加していましたが、2018年以降は頭打ちになっているようです。

特に、事業所数は2018年以降減少に転じていて、事業所の大手寡占化や事業報酬の就労定着実績での傾斜が大きく影響しているものと思われます。つまり、利用者を一般就労に定着させられない事業所は淘汰される傾向があるかと思います。

2018年に制度が始まった就労定着支援を提供する事業所数や利用者数は、ずっと伸びていて、堅調です。ただし、緊急事態宣言が出て外出が制限された2020年4月においては、利用が減少しています。

2020年春以降のコロナ禍で、就労移行支援も影響を受けています。感染拡大防止のため、一時的に通所対面での支援がオンラインでの支援になりました。その後、通所支援が復活していますが、中長期的には在宅就業が可能な職の開拓や支援に軸足が向くと思います。

通勤すること自体に配慮が必要な障がい当事者にとって、在宅就業は多くのメリットがあります。入社当初のトレーニングは対面でないと難しい面がありますが、業務に慣れた時点でリモートワークの導入は十分に可能かと思います。

今後は、事務所に出社しての物理的な単純作業から、在宅でのリモートワークでPCを活用した専門的な業務に移行していくものと思われます。障害者雇用においても、事務スキルのみならず、ITスキルなどの専門スキルの養成が必要になってくるものと考えます。

参考資料 References

「障害者雇用・福祉施策の現状について」厚生労働省 2020.12

タイトルとURLをコピーしました