精神・発達障害当事者の結婚のあり方を考える

精神疾患
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筆者は発達障害(ASD)の当事者で、二次障害として双極性障害の治療を続けながら、障害者雇用で障がいを開示して就労しています。障がいオープンでの転職を1度経験して、本稿執筆時の2021年で通算4年間、障害者雇用で安定的に就労継続しています。

そんな筆者ですが、2020年12月に婚約を果たしました。生涯未婚率の算定対象になる50歳直前のことでした。そんな筆者のお相方さんですが、やはり発達障害で治療中の女性です。彼女は10年間以上、障がい非開示で健常者と同じ条件で就労しています。

発達障害の当事者同士で結婚するということで、今回本稿では、精神障害者や発達障害の当事者の結婚について、取り巻く状況やあるべき姿をいろいろと考えていきたいと思います。

精神障害者の結婚状況

精神障害者の結婚の状況には、いくつかの形があります。

【男性】
1. 障がい発症前の結婚
2. 障がい発症後の結婚

【女性】
3. 障がい発症前の結婚
4. 障がい発症後の結婚

健常者として結婚生活を始めてからの精神疾患の発症では、二人が助け合って生活していける限り、結婚生活に関して大きな問題にならないだろうと考えます(上記1.および3.のパターン)。

しかし、元々精神疾患があっての婚活や結婚生活には、多くの課題が存在すると思います。語弊がありますが、当事者の女性は家庭に入って専業主婦として生活するという選択肢も、日本社会では許容されていると考えます(上記4.のパターン)。その一方で、男性は一家の稼ぎ頭として外で稼ぎ、経済力を期待され、主夫として生活するのは社会通念で許されているとは言い切れないので、安定収入を得るのに課題がある精神障害の当事者にとっては、結婚にハードルがあります(上記2.のパターン)。日本の社会通念とバイアスが、精神障害者の結婚のハードルになっているのは確かです。

ここで、精神障害者の結婚に関するデータを見ていきます。ゼネラルパートナーズさんの「障がい者の結婚に関する意識調査」を参考にさせていただきます。

現在結婚している人の割合は精神障害者で19%で、結婚していない人の割合が81%です。圧倒的多数の精神障害当事者が結婚生活を送っていないことが分かります。

一方で、当事者の結婚願望については、調査対象者の66%の人がいずれ結婚したいと回答しているのが、実際の結婚率とのギャップです。

興味深いのは、既婚者の多くの人(75%)が障がいが支障にならなかったと答えているのに対し、未婚者の多くの人が障がい(71%)が支障になっていると答えていることです。結婚未経験者にとっては、自身の障がいが結婚のハードルになっているとの囚われがあることが分かります。

生涯未婚率の高さ

精神障害者の話題からは少し離れますが、生涯未婚率について取り上げます。生涯未婚率の算定対象は冒頭にも書いた通り、50歳以上の男女です。ここ半世紀で、結婚していない男性の割合が激増しています。2020年の厚生労働白書によれば、特に50-54歳の男性は未婚率が20.9%で、約5人に1人は未婚です(50-54歳の女性は12.0%)。

この要因には、日本の社会通念である経済観念や、かつての家制度の名残で、男性が家族を養うだけの経済力を有していることが期待されることや、婚活市場のミスマッチ(若い女性を求める男性が多いか?)があると思います。今後、就職氷河期世代で、思うように正規就労ができなかった団塊ジュニア世代が50代に突入するタイミングになり、経済的な理由で思うような結婚できなかった男性が生涯未婚率の数値を押し上げるように思われます。

男性の就労形態や年収が結婚に影響するか

筆者が2018年1月頭に出稿した以下別記事では、正規雇用就労者の結婚率が高く、また年収が500万円以上ある層の結婚率が高いことを取り上げました。そこから、非正規雇用で就労する比較低収入の男性の結婚率が低いのではないかと推察しました。就職氷河期世代の1970年代から80年代前半生まれの層は、努力して希望しても正社員で就労できなかった人たちが多く、彼らの結婚率が低く(特に男性)、少子化に拍車をかけているのではないでしょうか。

障がいを開示して障害者雇用で就労する場合の雇用形態は契約社員などの非正規が大半で、収入が十分でなくて結婚にたどり着けないのではないかと考えます。

筆者の婚活体験から考えること

筆者が今のパートナーに出会う前、いくつかの婚活アプリを使ってパートナー探しをしたことがありました。

現在は婚活アプリの利用が盛んで、実際に婚活アプリを含む婚活サービスを利用する割合が上昇しています。リクルートブライダル総研の「婚活実態調査2020年」によれば、婚活サービスを利用して結婚した人の割合が2009年に2.9%であったものが、2019年には13.0%まで上昇しています。

そんなわけで、筆者も婚活アプリで成果が上がるかなと淡い期待をもって課金したことがありました。

当初は障がいを非開示にして相手を探したわけですが、筆者の場合は障がい以外の条件が悪くないため、マッチングまでは割と容易にたどり着いたのです。そして実際に会ってみて障がいを打ち明けた途端、相手の表情が変わって全てお断りを受ける状況でした。その後、プロフィールに障がいを記入して出会いを待ちましたが引き合いはほとんどなく、アプローチしてくれた女性は双極性障害の当事者でした。

婚活でも、障害者と健常者のマッチングが難しく、特に男性の障害者と女性の健常者との交際成立が困難です。男性の健常者は障がいのある女性に家庭に入ってもらう選択をすることがあり得ますが、逆に男性の経済力に課題がある状況では難しいという社会一般の通念が障害になります。

実際に、結婚相談所のネットワークであるIBJに入会するには、男性には安定収入が求められますし、現在の結婚紹介所のプランでも、障害者はIBJを利用できないようです。

ただし、障がいのある男性と女性同士は話が別で、障がいがある当事者同士の結婚相談所が存在しますし、上述したように障がいのある女性が障がいのある男性にアプローチをかけてくる場合はあり得ます。条件が先立つ結婚相談所や婚活アプリでは障がいがハンディキャップになってしまいますが、障害者同士のコミュニティ内であれば恋愛・結婚が十分成立しうるというわけです。

結婚や子育ての不安要素

障害者に限らず、健常者でも結婚生活や子育てに不安を感じ、少子化に結び付いています。ここでは、最新の「結婚・家族形成に関する意識調査」(内閣府)からデータを少しかいつまんで考察していきたいと思います。

経済面で見てみると、結婚前の交際の段階ではあまり問題になりませんが、結婚生活する段階では、配偶者と不仲になる不安(女性の割合が高い)に次いで、経済的に十分な生活ができるかどうか不安に感じる、特に男性の割合が高いです(57.2%)。子育てにおいても、仕事をしながら子育てするのが難しそうといった不安(51.1%)や、経済的にやっていけるかどうかの不安(63.9%)が多いです。

男性が経済面で不安を持つことが多い結果です。不安があるから結婚に結び付かず、必然的に少子化に歯止めがかからないというわけです。

健常者でさえこのように不安が多いのに、障害者にはさらなる課題があることは言うまでもありません。

法的な問題の検討

精神障害者をめぐる結婚生活には、法的なハードルも存在します。

よく調べてみたら、民法770条に以下のような条文がありました。

(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
 配偶者に不貞な行為があったとき。
 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

民法770条の第4項には、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」という規定がありますが、ここでいう「精神病」は、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)です。つまり、統合失調症や双極性障害で生活に支障がある場合、条件はあるものの、結婚相手に離婚の訴訟を起こされて、合法的に離婚できてしまうというわけです。

この規定は、現在では以下で述べる障害者権利条約の条文や理念に矛盾する不合理なものですが、現実の社会生活の状況を物語っているとはいえましょう。

一方で、日本でも批准されている「障害者権利条約」。結婚や家族に関して以下のように規定されています。

第二十三条 家庭及び家族の尊重
1 締約国は、他の者との平等を基礎として、婚姻、家族、親子関係及び個人的な関係に係る全ての事項に関し、障害者に対する差別を撤廃するための効果的かつ適当な措置をとる。この措置は、次のことを確保することを目的とする。
(a) 婚姻をすることができる年齢の全ての障害者が、両当事者の自由かつ完全な合意に基づいて婚姻をし、かつ、家族を形成する権利を認められること。
(b) 障害者が子の数及び出産の間隔を自由にかつ責任をもって決定する権利を認められ、また、障害者が生殖及び家族計画について年齢に適した情報及び教育を享受する権利を認められること。さらに、障害者がこれらの権利を行使することを可能とするために必要な手段を提供されること。
(c) 障害者(児童を含む。)が、他の者との平等を基礎として生殖能力を保持すること。

「婚姻をすることができる年齢の全ての障害者が、両当事者の自由かつ完全な合意に基づいて婚姻をし、かつ、家族を形成する権利を認められること」によって、障害者の結婚が親の承諾なしに、当人だけの合意で可能です。また、子どもを設けることや生殖能力を保持することも保証されています。

かつてあった優生保護法は現在廃止されていますし、優生保護法で生殖能力を奪われた精神障害者にも現在は賠償が行われていますが、人権上あってはならないことです。

精神障害者の結婚も尊厳を持って認められるべきだし、その結婚生活に必要な社会的支援も十分受けられるべきだという根拠になります。

筆者が考える精神障害当事者の結婚生活のあり方

ここまで数的統計や法律の条文を引き合いに出して、いろいろと検討してきましたが、筆者が精神・発達障害者の結婚生活に関して思うところは、以下のとおりです。

● 治療を継続的に受けており、症状が安定して日常生活が安定して送れること

● 日常生活の安定をベースに安定就労が可能であり、安定収入を得られること

社会復帰のステップとして、

自立した日常生活の確立

安定した就労継続

パートナーとの結婚生活

は十分成立すると考えています。その場合、男性も障害者雇用で就労し、収入水準が低いことも考えらえるので、できれば夫婦共稼ぎで生活を支えあうのが理想と考えています。

障害者に限りませんが、行政支援として、結婚準備や結婚生活に関する経済的な支援は欠かせないですし、障害者が子どもを設けることも許容されるべきです。保育のための社会インフラや教育資金の経済的支援は、障がいあるなしにかかわらず、少子化対策には必須のことではないでしょうか。

精神・発達障害者同士の結婚生活は成り立つものですし、社会からの支えを得て成立するべきだと考えます。筆者は、当事者同士でも結婚生活ができるロールモデルとして、今後も情報発信をしていきたいと思っています。

参考資料 References

障がい者の結婚に関する意識調査(ゼネラルパートナーズ)2019

障がい者の結婚に関する意識調査|ゼネラルパートナーズ|note
こんにちは。ゼネラルパートナーズです。 今回は、「障がい者の結婚に関する意識調査」のレポートをお届けします。 内閣府の発行している「平成25年度 障害者白書」によると、配偶者がいない割合(未婚率)は、身体障がい者が約35%、精神障がい者が約64%、知的障がい者が約97%と健常者の約26%と比較して突出して...

厚生労働白書(厚生労働省)2020

図表1-1-8 年齢階級別未婚率の推移
令和2年版厚生労働白書ー令和時代の社会保障と働き方を考えるー図表1-1-8 年齢階級別未婚率の推移を掲載しています。

婚活実態調査2020(リクルートブライダル総研)2020

【婚活実態調査2020】発表!
現在の婚活の概況、サービス利用、志向性などが把握できる調査「婚活実態調査2020」を発表! →詳しくはコチラ

結婚・家族形成に関する意識調査(内閣府)2014

平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(概要版): 子ども・子育て本部 - 内閣府
子ども・子育て本部のページ。制度の概要、...
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